中野ミニ知識: 東京・中野駅近くの知られざる鉄道記念碑 ☜ 由来が判明しました

きねん‐ひ【記念碑・紀念碑】

〘名〙 ある人の功績をたたえたり、また、ある出来事や行事などを記念したりして建てた碑。モニュメント。また、比喩的に、ある出来事や時代の記念となるような象徴的な物事。
- 小学館 精選版 日本国語大辞典

図書館、鉄道博物館ではわからず

JR中野駅近くの線路ぎわに、省線国鉄JR東日本の各時代を通じて中野電車区と呼ばれた場所がある。2024年10月に中野統括センター中野南乗務ユニット(東京都中野区中野2)という名に変わったことは下記記事にも書いた。

この場所の鉄柵がはまった門の向こうに石碑が見える。「記念碑 開設五十周年 運轉無事故総裁表彰 衛生管理総裁表彰」という字が刻まれている。裏面は鉄柵の外からは見えない。

JR東日本中野統括センター中野南乗務ユニットの記念碑。東京都中野区中野2、2025/3/2撮影

記念碑は、線路側からみるとこういうところに建っている。

総武線各駅停車から見たJR東日本中野統括センター中野南乗務ユニットの記念碑(赤丸は加筆)。2025/2/28撮影

これが何なのか、インターネットや国立国会図書館デジタルコレクションなどを検索したがそれらしい情報は見つからない。私たちの仲間は中野区立図書館レファレンスサービスと鉄道博物館に照会した。

中野区立図書館からは2025年3月11日に回答があった。「記載が望めそうな資料の目次や、または資料の全文検索に対応した国会図書館デジタルアーカイブGoogle Books、各社新聞データベースなどを使用し、合理的な検索が可能な範囲で」調べてくれたものの、「該当の石碑について記載のある書籍、地域資料、雑誌・新聞記事を見つけることは出来ませんでした」とのことだった。

鉄道博物館からは3月20日に「当館所蔵図書により該当するものを探しましたが、回答に繋がるものは見つかりませんでした」との回答があった。

JRから丁寧な回答が

中野区立図書館からは「石碑は通常関係者以外立入ることのできない場所にあるため、JR東日本中野駅、中野統括センター中野南乗務ユニットに直接お問い合わせいただくのがよろしいかと存じます」、鉄道博物館からは「直接、東日本旅客鉄道 中野統括センターへお問い合わせされてみてはいかがでしょうか」との教示があった。

そこで、私たちの仲間はこれらの回答を印刷して同封し、書状でJR東日本に照会した。とはいえ、2021年に中野駅『駅史』の所在を問い合わせたときには返信すらなかったから、実のところあまり期待していなかった。

ところが2025年4月14日、中野統括センターの副長という方から、丁寧な回答がメールで届いた。メールには、外からは見えない記念碑の裏面の写真が添付されていた。「昭和廿九年十二月廿日建之 東京鉄道管理局中野電車區」と彫られている。

JR東日本中野統括センター中野南乗務ユニットの記念碑裏面。2025/4/14中野統括センターからのメールに添付

メールには次のように記されていた。

「開設五十周年」につきましては、弊所の前身の甲武鉄道新宿電車庫が明治37年(1904年)2月1日に開設されており、この石碑は開設50年となる昭和29年(1954年)に建立されたものと思われます。新宿電車庫が現在地の中野に移転したのは、大正10年(1921年)7月10日で、2021年には中野電車区開設100周年記念イベントを開催いたしました。
- 2025/4/14 JR東日本中野統括センターからのメール

1954年に建てられた「甲武鉄道新宿電車庫開設50周年」の記念碑と判明した。当時の資料は残っておらず、石碑に記された表彰の詳細や揮毫した人物はわからないという。

1956年発行の中野駅『駅史』には、1954年に建てられ記憶に新しいはずのこの記念碑や、あったかもしれない除幕式などについての記載は全くない。

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少し昔の中野の歴史を調べている私たちのサークルで、2021年に冊子を作った。東京都中野区の桃園橋について、江戸時代に木橋が架けられ、1936 (昭和11) 年に鋼鉄桁橋に架け替えられ、その85年後に撤去工事に至る歴史を調査して記した。写真と図を多数収録。ひとつの橋が近世以降の地域の歴史と強く関わってきたことがわかる。架橋の時期や橋の大きさ、建設の状況なども、この冊子の中で詳細に考証している。中野駅にも触れている。

Orangkucing Lab Journal 猫人研究所雑誌
創刊号 2021年8月号 400円(税込) 64p ; A5
『桃園橋の歴史』

冊子のダイジェスト(A4裏表4つ折のzine)を無料で公開している☟。

なお冊子は下記ブログ記事を大幅に加筆した内容となっている。

2025/4/15 黒絵 魚

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