キリスト教英語ミニ知識: nepotism ☜ 縁故主義

nepotism (縁故主義)

ローマ教皇の"甥"

OEDによると、nepotism (= nepot + ism = nephew (甥) + "主義")という語は、仏語のnépotismeあるいは伊語のnepotismoに由来する。

14~17世紀には、ローマ教皇が自分の甥や姪や隠し子枢機卿などの要職に登用するのがごく普通のことだった。たとえば、ボルジア家から出た教皇アレクサンデル6世(1492-1503在位)は、(公然の)隠し子のチェーザレ(1475-1507)を枢機卿にし、娘のルクレツィア(1480-1519)や毒薬をも使って、一族の繁栄と教皇領の軍事的自立に努めた。

英語におけるnepotismという語の初出は、教皇アレクサンデル7世(1655-1667在位)が自分の実の甥(nephew)を枢機卿にしたやり口を批判する1669年ごろの資料だ。この語は、さかのぼって歴代教皇縁故主義的な振る舞い全般に対しても用いられるようになった。

なお、1692年、教皇インノケンティウス12世(1691-1700在位)がした "Romanum decet Pontificem" で始まる宣言により、枢機卿などに身内を登用できるのは1人までとなっている。

注† カトリック教会の聖職者は、婚姻が禁じられている。したがって、教皇には子がないことになる

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少し昔の中野の歴史を調べている私たちのサークルで書いたエッセイです。東京・中野駅に近い、古民家があるバプテスト派の教会で、まだ洗礼を受けるでもなく教会員になるでもなく過ごした日々のあれこれや、キリスト教的な英語の話題をまとめました。よかったら買ってね☟。

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